日経BP社とPBL授業で東京ゲームショーのオンライン化を考えました!コロナ禍きっかけに本学と企業連携が実現
最新老虎机-老虎机游戏@感染拡大(コロナ禍)を受け、世界最大級のゲーム?コンテンツ見本市「東京ゲームショー」のオンライン化がもたらす課題の解決を目指すPBL(問題解決型)授業に本学の学生が取り組みました。同見本市を共催する日経BP社と本学の企業連携授業として具体化され、学生らは約2か月かけてプランニングに挑戦しました。8月3日(月)に最終提案のプレゼン、それに対する日経BP社からのフィードバックが行われたほか、9月3日(木)放送の「渋谷のラジオ」の本学公認番組「JJキャンパスボイス」で最終提案の概要が紹介されました。
PBL授業は、受動的な学習ではなくて、自ら課題を発見し、その解決を目指す主体的?能動的学習です。今回のPBL授業は、人間社会学科の駒谷真美教授が担当する講義「情報セキュリティ」の一環であり、併せて、本学学長室の「教育プロジェクト」の一環として実現しました。駒谷教授の「情報セキュリティ」の授業は、今年度は3年生18人が履修しています。
「東京ゲームショウの立て直し」が課題
日経BP社から6月22日(月)に提示されたミッション(課題)は、「イベント(コミュニティ)事業の立て直し」でした。同社には事業の根幹である雑誌?書籍の出版のほか、デジタルコンテンツの提供、コンサルティング、イベントなど事業の柱がいくつかありますが、わけても東京ゲームショーはイベント事業の中で最大規模のものです。各地のイベント開催がコロナ禍の影響を受け中止?延期が相次ぐなか、東京ゲームショーも30回の歴史で今回初めて幕張メッセ(千葉市美浜区)での開催を断念、オンライン開催に変更されました。

これを受け、履修者18人を1グループ4~5人ずつに4チームにわけてミッションを議論。7月13日(月)の第一次提案、さらに日経BP社からのフィードバックを経て、8月3日(月)の最終提案にこぎつけました。
この間、コロナ禍のためグループワークは100%ZOOMを介して展開。日経BP社からは、文教営業部の渡部良平さん、小川雄佑さんらが学生との議論に加わり、毎週ZOOMのブレイクアウトルームに参加。学生とのディスカッションを通じてプランニングをサポートしました。
最終プレゼンはチーム1~チーム4の番号順に行われ、各チームとも、それぞれ「新しい層獲得大作戦」(チーム1)、「オンライン商談サポート~世界と画面でつながるビジネスイベント」(チーム3)など、ユニークなプランを考案、日経BP社に最終提案しました。
人気ユーチューバーをキャスティング-チーム1

このうち、チーム1は「ゲームに関心のある女性層の新規獲得」を最終目標に掲げ、女性層に人気のユーチューバー「花江夏樹さん」を東京ゲームショーのキャスティングに起用する案を最終提案しました。
花江さんは人気アニメ「鬼滅の刃」に出演する声優であり、登録者158万人に達する人気のユーチューバーです。しかもチャンネルの視聴者の男女別割合で女性が53%と女性に人気で、自らもゲーム実況も行っているという実績もあります。
学生たちは、東京ゲームショーの来場者がヘビーゲーマー中心、しかも男性中心という現状をビジネスチャンスととらえました。つまり、ライトユーザーやミドルユーザーが中心の女性ゲーマーならば、まだ新規開拓の余地ありというわけで、女性に人気のユーチューバーである花江さんに起用の白羽の矢が立てられました。
これに対し、日経BP社の渡部氏からは「目の付けどころがなかなか鋭い。また、しっかりデータを分析した結果で解答を導き出しており、ちゃんと順番を踏んで出しているので、説得力がありました。また、声優のところは、我々のようなおじさんが出すよりも、若い方々が出した方がすごく説得力が増すので、とても良いと思いました」と高く評価されました。
「あつ森」人気を活用-に着目-チーム2

チーム2は最終目標としては、ゲームはするが、東京ゲームショーに参加するまでには至らないでした若者や女性という「ライトゲーマー層の獲得」にターゲットを絞りました。その実現に向け、SNSを使った東京ゲームショーの宣伝や、「あつまれどうぶつの森」のコンテンツの活用を最終提案しています。
このうち、あつまれどうぶつの森は、任天堂のゲーム機「Nintendo Switch」のパッケージソフトとして過去最高の売り上げを記録したソフトです。若者の認知度は9割を超えているというデータもあるほどの人気を誇ります。
学生らは、このあつ森人気に着目して、スクリーンショットのインスタ映えコンテストや有名人が自分の「島」を紹介するオンライン番組の開催を提案しました。併せて、呼びたい有名人としてチャンネル登録数215万人を数える二人組の人気ユーチューバー「ヴァンゆん」の名前を挙げました。
このプレゼンに対し、日経BP社の小川氏から「グループワークの時点では、ライトゲーマー層とヘビーゲーマー層というところで、ちょっとあれもこれも(手を広げすぎ)という印象も少しありました。しかし最終的にライトゲーマー層にターゲットを絞り込んだことで、やりたいことが明確になり、非常に良かったと思います。加えて、ユーチューブとかインスタグラムとか、SNSの効果を数字で詳しく解説していたので、非常によく分かるプレゼンになっていました」とレビューがありました。
オンライン商談をサポート-チーム3

ゲームだけではない東京ゲームショーの役割に注目したグループもあります。それはチーム3で、東京ゲームショーをビジネスイベントとして捉え、オンライン商談や商談に対するサポートを提案しました。3班のM?KさんがZOOM録画でプチプレゼンをしてくれました。
このチームは、東京ゲームショーのビジネスマッチングの機会としての価値に着目しました。実際、2019年に開催した東京ゲームショーのビジネスマッチングに関するデータによると、事前申込数は4,000件にのぼり、成立したマッチング件数は1,500点。このデータを見る限り、東京ゲームショーは商談成立の絶好の機会でもあるといえます。しかし、現在はコロナ禍により、海外の企業が渡航禁止で日本に来日できず、日本の企業も海外に出張できません。そこで、オンライン商談というわけです。
さらに学生は、オンライン商談をスムースに進めるため多国語の同時通訳サポートも提案しました。というのも、海外と行う商談は英語中心のため、英語が母国語でない場合は、意思疎通が円滑に運ばないこともあるからです。
その上で、学生たちは利用する通訳サービスとして、「EJ EXPERT」のリモート同時通訳サービスはどうかと提案しました。参加者は複数の言語チャンネルから選択可能で、スケジュール機能を追加すれば、空いている時間を効率的に使うこともできると強調しました。
これを受け、日経BP社の渡部氏からは「オンライン商談に焦点を当てたところが非常に注目すべきところでした。主催者側からすると、東京ゲームショーは商談の場という意味合いがかなり強いためで、今回はそのコロナの影響でオンラインになるとか、中止になった場合に商談の場が削がれると出店者数が相当減ってしまうため、日経BP社としてはすごく課題に感じていました。ここを課題に取り上げ、結論まで結び付けていただいたというのは、その着眼点が主催者からすればとても素晴らしいと思えました」と評価しました。
安全な見本市の実現を目指す-チーム4

最後はチーム4の発表です。チーム4は東京ゲームショーのオンライン化を受け、バーチャル化してもなお、安心?安全な見本市の実現を目指すとした最終提案を行いました。具体的には、実際に展示会に参加しているかのようなバーチャルなWebページを開発するとともに、オンライン化を踏まえて東京ゲームショーのキュリティ対策を強化するとアピールしています。
このうち、Webページの開発では、オンライン上にイベント会場マップを作成、受付や展示ブース、商談ブースなどを選択できる仕組みを構築することを提案しました。この仕組みは、展示ブース内に入れば商品を見たり、スタッフとミーティングをしたり、予約もできたりするという、リアルの東京ゲームショーにも負けない高い情報伝達の実現を目指す試みです。
また、学生らは、オンラインのセキュリティ強化が評価されることにより、来場者の増加が見込めると考えました。例えば、マカフィーなどセキュリティーソフトを開発する企業とスポンサー契約を結べば、来場者によるソフトのダウンロードも期待できるとし、収益と安全性強化の一石二鳥が図れると想定しました。
これに対し、日経BP社の小川氏からは「四班の発表は、自分たちのやりたいことと、(バーチャル展示会という)やるべきことの両方を伝えていて、そこがすごく良いと思いました。セキュリティ面とか海外の視点とか、そういう独自の切り口や視点も面白い」と論評がありました。加えて、「四班で非常に素晴らしかったのは、『課題はこれ』、それに対する『結論の解決策はこれ』というのを、しっかりと皆さんで忘れずに常に持っていたことでした。話し合いをしていく中で、どんどん話がズレていってしまうことはよくありますが、そうならずに皆さんが進められたのは非常に優秀だと感じました」というコメントがありました。
企業評価の試みも、軒並み高評価

企業連携授業ならではの試みとして今回、日経BP社の社員4人による企業評価も行われました。「課題設定は適切か」「解決策としての手段は適切か」「チームとして活動できているか」など5つの視点が用意され、それぞれ「Excellent」「Very Good」「Good」「Poor」の4段階の評価が試みられました。結果は、4チームとも、ほぼ軒並み「Excellent」か「Very Good」の高評価だったと言います。
例えば、チーム1をみると、「総合的なストーリー性と熱意?志が感じられるか」の視点からは4人全員から最高点の「Excellent」の評価を受けました。また「表現が適切か」の視点からは、4人のうち3人もが「Excellent」の判定でした。日経BP社サイドは理由としてそれぞれ「提案したい事柄が明確」「情報収集やデータの使い方が的確で分かりやすかった」などを挙げています。

今回のPBL授業を受け、日経BP社の渡部氏は「大学生とPBLをやるのは初めてでした。課題を出した側として『ちょっと難しいかな』と思っていましたが、最初のスタートから一次提案か最終提案まで行く2ヶ月近くの短期間で、相当な成長を見させていただいたなという感じがしました。どこに課題を見つけて、どういうペーシング、どういうデータを持ってきて、説得力を増して結論まで持っていくかというのは、どのチームもできていたので、非常にレベルが高かったと思います」と論評しました。
続いて、小川氏も「ここまで仕上がるというのは、正直思っていませんでした。企業に勤めていると、やっぱり頭の中も凝り固まっているっていうことも少しあり…。それに縛られない皆さんの伸びやかな発想というのは、本当にヒントをいただいた気がします。また個人的にはユーチューバーとか声優とか、あまり詳しくなかったのですが、そこにちょっと(問題解決の)ヒントがある気がしました。時代に取り残されないように私も頑張ります」と語りました。
駒谷真美教授の話
「今まで講義でいろんなPBLをやってきましたが、今回はかなり特別でした。なぜなら、コロナ禍でのPBLだったからです。それだけに、今回のPBLの成果は、デューイが論じた『変容する環境に適応できる能力の育成』に匹敵するところに近いと思っています。デューイという人は、19世紀の後半から20世紀の前半に活躍したアメリカの哲学者であり、教育学者です。デューイスクールという実験学校で有名ですけども、彼が言うところの実践とは、つまり実社会と実生活を切り離した『死んだ知識』でなくて、社会的に意味のある活動を教育として追求することでした。ですので、今回、日経BP社さんとご一緒させていただいたPBLというのは、本当に実践的で進歩的な試みになっていたと思います」
履修した学生の声
- 「本格的な企業提案は自分にとり成長できる体験でした。特に最初の提案時には現状分析が浅いと言われて自分の探りが説明不足で浅いと知ることができました。現在、インターンシップでグループ発表とかをしているんですけれども、その時にPBLの経験がすごく役に立ってます。いい経験でした」(チーム1 3年 K?I)
- 「正直とても難しくて大変でした。すごく貴重な経験が出来たので良かったです。本当に社会人になったような気持ちでPBLに取り組ませていただきました。今は人と直接会うのが難しい時期ですけども、仲間と力を合わせてオンライン上で1つのことを成し遂げることが出来たので良かったと思います」(チーム2 3年 R?M)
- ?今回のPBLで課題に対して様々な観点から解決策を考える力が身に付きました。企業の方々をお招きした本格的なPBLであり、またオンラインでグループ活動を進めていくということは自分にとって初めてのことでした。そのため、進めていく中で、この提案でいいのかという不安や行き詰まることもありました。しかしメンバー同士で支え合い、簡単な課題ではないからこそ、最終提案を終え、企業の方々からフィードバックを頂いた時は、今まで味わったことのない達成感や成長を強く感じることが出来ました。社会的で実践的な講義だったため、毎回の講義がすごく刺激的でした。この講義で身につけた力を今後も活用していきます?(チーム3 3年 M?K)
- 「今回初めて企業の方とこうした本格的なPBLをやらせていただきました。東京ゲームショーという、大きなイベントに対してのPBLとていうのは、なかなかない貴重な体験であり、すごく光栄でした。正直大変だなと思ったり、難しいなあと思ったりしたのですが、やはり、これから社会人になるに当たり、事前に本格的な提案だったりとか、考える機会とかをいただけたのは、本当にありがたい経験だったなと思います」(チーム4 3年 C?F)