文学部の学生有志が「エストニアに学ぶウェルビーイング」をテーマにプログラムを実施(11/30)
文学部の学生有志6名で結成する「グローバルコアラ」が「エストニアに学ぶウェルビーイング」をテーマとしたプログラムを11月30日(土)、最新老虎机-老虎机游戏@で実施しました。これは、2024年度の「実践チャレンジ奨励金」の助成を受けて実施する「JGCP—Jissen Global Circle Project—(以下、JGCP)」の第2弾イベントであり、文学部国文学科の深澤晶久教授が立ち上げた「実践ウェルビーイングプロジェクト(以下、JWP)」のプログラムの一つにも位置付けられるものです。当日はJWPのメンバーが多数参加し、ここでしか聞けない貴重な話からウェルビーイングの学びを深めつつ、グローバルな視点を養いました。
「エストニアに学ぶウェルビーイング」
JGCP×JWPの取り組みとして生まれた、学生発案のプログラム

本学で開催された国際的なイベントに参加したり、実際に海外に行ったりしたことで、物事の見方や意識が変わったという経験を持つ文学部生6名。彼女たちが結成したチーム「グローバルコアラ」は、知的好奇心に基づく探求心旺盛な文化?学術面の活動を支援する「実践チャレンジ奨励金」を申請し、2つのプログラムからなるJGCPを企画しました。これは、「グローバルな経験を通じて自分たちが感じた成長を、ほかの在学生にも体験してもらいたい」「在学生が新たな挑戦に一歩踏み出すきっかけを提供したい」という思いから生まれたものです。9月18日(水)には「異文化を理解する」というコンセプトで、1つ目のプログラムである留学生との交流会を最新老虎机-老虎机游戏@で実施しました。
そして、11月30日(土)に行ったのが「エストニアに学ぶウェルビーイング」をテーマにした2つ目のプログラムです。コンセプトは「自分の可能性を知る」。ロボット工学分野のスペシャリストを育成するClevon Academy(クレボンアカデミー)のコーディネーターであるライドー?バルドヴィー氏、エストニアと日本の架け橋としてビジネスを行うネクストイノベーションの熊谷宏人氏とKey氏の3名をゲストに迎え、2024年度のJWPの取り組みの一つに位置付ける形で執り行いました。
ウェルビーイングに通じるエストニアの「ソーシャルアントレプレナーシップ」

まずは、ファシリテーターを務めるグローバルコアラのメンバーが、「私たちの思うエストニア」というタイトルでエストニアのお国柄を紹介。教育とITの先進国であるエストニアには、次世代を担う人材を育成するための革新的な教育アプローチがあり、その中心を成すのがソーシャルアントレプレナーシップだと説明しました。

これを受けて熊谷氏は、「主体性や創造性、問題解決能力を養い、社会的な価値を考えながら対応する力を育むのがエストニアのソーシャルアントレプレナーシップ。誰かに与えられることなく自身で問題を設定し、自分と身近なアクティビティを結び付けて考えることが重要」と解説しました。また、「周りに言われたからではなく自分がやりたいという気持ちで物事を選択すれば、納得した人生を送れる」と、自身の留学や起業の経験も踏まえてウェルビーイングに結びつくヒントを提示。「問題と回答の組み合わせは一つしかないという固定観念を取り払い、自分が得意なことから失敗を恐れず挑戦してほしい」と学生たちの意欲を喚起しました。さらに、女性として社会で活躍しながらウェルビーイングを実践していくためには、「社会が変わるのを待つのではなく、自から行動に出ることが大事」と付け加えました。

ライドー氏は、「自分が手に入れたいもの、やりたいことがあるとき、どうすればそれを達成できるか考える、その小さなステップからソーシャルアントレプレナーシップは始まる。自分が持っているリソースを日頃から意識することも大切」と、主体的な姿勢の重要性を説きました。また、自身がコーディネーターを務めるClevon Academyの学びの特徴や、ChatGPTとの付き合い方などにも触れ、「社会やテクノロジーの変化とともに、教育も変わっていくべき」「声を挙げなければ、他者とのシナジーは生まれない。活躍の場を国外に見つけるのも一つの道」と助言しました。

一方でKey氏は、幼少期に自らの興味からインターホンを自作したエピソードを披露し、個人の主体性を伸ばすエストニアの教育の利点や、海外と日本の教育の違いについて自らの見解を述べました。さらに、「エストニアは失敗を恐れない文化がある」と話し、恐れずに挑戦することの大切さを強調。奈良県宇陀市がエストニアと連携して実施する短期留学プログラムの成果も紹介しました。
「幸せの4つの因子」を軸に学びを整理

会場のスクリーンには、かつてJWP主催の講演でご登壇いただいた慶應義塾大学 前野隆司教授が提唱する「幸せの4つの因子」のイメージ図が投影され、参加者たちは「やってみよう」「ありがとう」「なんとかなる」「ありのままに」という4つの因子を軸に登壇者の講演の内容を整理。いくつかのグループに分かれて3氏の話から感じた思いを共有しました。

また、登壇者に対する質疑応答の時間も設けられました。「日本にはソーシャルアントレプレナーシップについてじっくり向き合う機会がないのではないか」という疑問には、「エストニアがソビエト連邦から独立を果たしたのはおよそ30年前。当時は何もない状態だったので、生き残るためのすべを自分で見つけなければならなかった。そのような国の歴史が、ソーシャルアントレプレナーシップの発展に寄与した一面もある」とライドー氏。Key氏は、「エストニアの人は時間の使い方がうまい。先見の明があり、未来を見据えて効率良く行動している」と補足しました。

今後チャレンジしたいことは何かという問いに対しては、「もっと、コミュニケーションがうまくなりたい。日本でも会社を立ち上げたので、日本での活動にもより一層力を入れていきたい」(熊谷氏)、「毎日、小さなことでも必ず挑戦している。それを続けることで自分を強くしていきたい」(ライドー氏)、「自分は誰かのためになれているかを生涯問い続けたい。その延長線上に幸せがあると思うので、歩みを止めることなくまだ知らない世界を学び尽くしたい」(Key氏)と前向きな言葉が続き、参加者たちはうなずきながら熱心にメモを取っていました。
得た気付きを「グローバルマインド宣言」として言語化

ブレイクタイムをはさみ、エストニア語を学ぶ時間も設けられました。ライドー氏のレクチャーで、エストニア語で自己紹介をしたり、エストニアでの数字の数え方やその発音を学んだりと、エストニアの言語に触れました。
最後はまとめの時間。参加者たちは「私のグローバルマインド宣言」と題して、今回のプログラムを通して感じた思いを英語で付箋に手書きし、それを地球のイラストが描かれた模造紙に貼り付けていきました。
「I’ll change myself before society changes!」
「Don’t be afraid to fail. Keep trying.」
「I want to tell the charm of the tea ceremony to people all over the world.」
など、学生たちのポジティブな思いが詰まった付箋で模造紙は埋め尽くされました。
JGCPによる全2回のプログラムは今回で一区切りを迎えましたが、JWPは今後もさらに多数のプログラムを実施していく予定です。
グローバルコアラメンバーのコメント

美学美術史学科3年 奧川結さん
2024年6月、“グローバル”な志向が強い“コア”なメンバー6名で「グローバルコアラ」を結成しました。私たち6名全員、それぞれが国際的なイベントに参加したり、実際に海外へ行ったりする中で成長の実感を味わっているので、このすばらしさを一人でも多くの仲間に伝えたいと思い、「実践チャレンジ奨励金」を申請しました。11月30日に実施したのはJGCPの2つ目のプログラムで、テーマは「エストニアとウェルビーイング」。JWPでも活動し、なおかつエストニアの企業であるネクストイノベーションのインターンシップを経験したメンバーが、ウェルビーイングとエストニアのソーシャルアントレプレナーシップとの親和性に気付いたことからこのテーマにたどり着きました。
「実践チャレンジ奨励金」の助成を受けての企画ということもあり、どのようなストーリーにすれば社会的貢献につながる学びを参加者の皆さんに提供できるか、ゲストの皆さんにお話いただく内容や順番について、メンバーで何度も打ち合わせを行いました。直前に登壇者の人数が変更になったこともあり、予定通りに進行できなかった部分もありますが、私たちの思いが少しでも参加者の皆さんに届いていたらうれしい限りです。

ウェルビーイングは、「身体的、精神的に良好な状態」と日本では認識されていることが多いように思います。その点、ソーシャルアントレプレナーシップの精神が浸透しているエストニアでは、主体的な行動を取ることで自己実現を果たし、理想の自分に近づくことでウェルビーイングを実践するという流れが自然に成立しているように見えます。大きな事を成し遂げる必要はなく、小さな事であっても自主的に取り組む姿勢が大切だということを今回あらためて学び、私たちメンバー自身もウェルビーイングの実践に向けて一歩前進した思いです。
また、グローバルマインドを広げることも今回のイベントの大きな目的でした。だからこそ、グローバルに活躍するゲストの皆さんから直接お話を聞くことができ、本当に良かったと思っています。特に、高校時代に留学を経験し、エストニアの大学に進学、現地で起業された熊谷さん、16歳からアメリカで生活され海外経験が豊富なKeyさんのお話は、参加者の皆さんにとって良い刺激になったのではないでしょうか。
今後もグローバルな視野を広げ、それをウェルビーイングの実現へとつなげるお手伝いをしていきたいと考えています。グローバルコアラとして、新たなチャレンジの機会を引き続き模索していきます。
関連情報
エストニアのアントレプレナーシップ教育については、こちらの記事もご参照ください。