SpaceDesign Labo, JISSEN Univ.
2019年度卒業研究 空間デザイン研究室 遠藤紀香
駅とは鉄道の停車場所であり、不特定多数の人々が利用している公共空間である。特に電車社会である東京では、普段から電車を利用するため、駅に足を運ぶ人が少なくない。もはや駅は人々にとってなくてはならない、生活の一部であるとも言えるのではないか。
しかし、人は普段から駅を利用しているにも関わらず、自分が生活する上での空間と認識していない。家から出た外部空間にあるから、周りに人がいるから、といった公私を明確に分け過ぎている現代の暮らしに縛られているのである。
私たちは家の玄関ドアを境に、人には晒すことのない本当の自分と、それを隠して人前で見せる建前の自分との切り替えをしている。家の中では横になって眠ったり、だらけて過ごしたりしてプライベート空間を十分に満喫しているが、外部空間へと踏み出した瞬間、自分のテリトリーから出たという意識に変わり、公共の場にふさわしい行動をとる。プライベート空間とパブリック空間で、過ごし方を変えているのである。
駅もまた、素の自分をさらけ出すことのできない公共の場として過ごしている。しかし、公共の場という以前に、自分が普段から利用している場所である。もっと自分の生活の場として活用しても良いのではないだろうか。
今回の計画では、完全公共空間である駅にプライベート空間を取り入れることで、普段から利用している人々にとっての駅の在り方を大きく変化させる提案である。
対象敷地:東京都日野市日野駅
敷地面積:約9500m2
ホームの長さ:210m
「家のような駅」
もはや生活する上で欠かせなくなっている駅を、移動手段としてだけではない、日常的に利用する空間へと変える。
1)共同行為:くつろぐ、会話
2)家事行為:料理、掃除、洗濯
3)個人行為:睡眠、更衣
4)生活衛生行為:入浴、排泄
このような家で行われている行為を駅に取り入れ、生活機能が備わった駅を提案する。駅が変化することで、市民にとって新たなライフスタイルや街へと生まれ変わる。
<セットバックの建築>
上層を下層よりも後退させることによって階段状にしたセットバックを採用した駅。供給される日光や空気を増やす役割に加え、壁を取り払った開放的な空間にしている。
<地上からホームまでの動線>
朝起きてから家を出るまでのルーティンを駅で行う。顔を洗う、朝ごはんを食べる、着替える、といった一連の動作をしているうちにホームに辿りついているような上下の繋がりを作る。駅について家で就寝するまでの夜の生活も同じく、駅でくつろげる空間を所々に配置する。
駅で生活行為を行うことにより、街全体が自分の家?テリトリーという認識へと変化していく。今まで家の中でしか見せられなかった素の自分を、駅から街へとさらけ出していく。
<駅で行われる行動>
?衣類を洗濯して干す
?こたつに入りながら電車を待つ
?野菜を育ててその場で調理する
<街で起こる人の変化>
?パジャマで街を出歩く
?至るところで横になって寝ている人
→今の日本では非常識と言われているような行動、人にはあまり見せたくないといった恥じらいがない、住民の自由と自然体を尊重した街へと変化する。
(図1)イメージ写真
2003-2020, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2020-01-23更新