卒業研究要旨(2024年度)

社会復帰のために住む場所

2024年度卒業研究 空間デザイン研究室 間所千柚子

1.はじめに

 日本の刑務所は大きな問題点を3つ抱えている。1つ目は高い塀に囲まれて刑務所内は閉ざされた空間であること。2つ目は刑務所内に個人の生活領域がない点。3つ目は再犯率が高い点である。日本は治安が他国に比べて良いのにも関わらず約4.5mもの塀が何mも連なる。この塀があることにより、中の人は外の世界も知らないし、私たちも刑務所内がどうなっているのか知らず二つの空間に分離してしまっている。これらの問題は出所後の社会復帰の妨げとなり出所後の支援が少ない日本は社会に適合できず再犯を繰り返す、悪循環ができている。そこで刑務所と社会の中間となる社会復帰するための仕事と住む場所が一体となった施設を設計する。

2.設計概要

敷地面積:74.5m×62.5m
対象人数:35人
対象者:出所者(軽犯罪者歴)、社会に適合できない人、一般人
管理:国営
詳細:対象者は働きながらここで住む。住む場所は最大で3回変わり、2年間住まう。2年間のうちに職業訓練や生活の自立性、コミュニケーション能力を養う、仕事はパソコンや家具制作がある。この施設は場所によって仕事内容は異なる。

3.グラデーションで変化する

 社会復帰をするにあたって、社会に馴染めないのは能力に差があるからだと考えた。グラデーションを作ることで徐々に差が埋まると考えた。グラデーションは三段階に内側、中間、外側と分かれている。内側から外側に移動するにつれて生活の仕方と仕事のスキル、コミュニケーションの仕方が変化する。生活の仕方ではリビングダイニングの大きさ、空間の開放感が異なり、外側では自分の家に風呂場やトイレ空間が加わり清掃するなど自立をうながす。仕事のスキルは外側に行くにつれて初級から上級へと変化する。例えば家具であれば木材から革細工など。コミュニケーションでは人数や関わる人が変わる。内側はそれぞれ1人から2人と小さな空間を散りばめる。中間は「個」と「共」が混じる場所。外側は「共」と「公」が混じる場所と変化する。

4.メイン通りとサブリビング

(1)メイン通りを設けることで指標をー

 メイン通りを設けることで内側の人が外側の人の様子を見ることができ自分の指標が分かる空間を提案する。主に仕事場をみることができる。作られた家具などを実際に使用したり、購入したりできる。将来像を見ることでこんな仕事スキルを身につけたいと思え、こんな物が買えるようになると上を目指せると考えた。

(2)サブリビングで交流をするー

 サブリビングは内側と中間、中間と外側を結ぶ各建物2階にある場所である。ここではかつての仲間と会話や情報交換ができる場所である。

5.結果

 グラデーションを設けたことにより順々に社会スキルを身につけることができる新しい国営施設になる。

(図1)住まいの変わり方詳細図
(図2)道路交流場所の様子



2003-2025, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status:2025-02-16更新