卒業研究要旨(2024年度)

escape ?都市に寄生する空中回路?

2024年度卒業研究 空間デザイン研究室 中井優希

1.はじめに

 過去にあるコミュニティに対し「居づらさや悩み?不満」を抱え、逃げ出したくなったことがある。しかし、そう感じた時私たちの生活圏には逃げ場がないと気づいた。こんな経験は悩みの大小に関係なく誰しも一度はあるのではないか。前向きな感情を受け入れる場所や建物は多く存在している中で、なぜ苦しみや悲しみの受け皿となるような居場所は少ないのだろうか。また近年IT企業等の職種で、都市から離れた場所でのオフィス活動が増加したが、この背景には都市に対する居づらさや生産効率の期待低下が関係しているのではないか。

 本研究では、都市の隙間に逃げ場を設計し、新たな都市との向き合い方を提案していく。「原っぱ」のような何も強要されない場で、自分自身や様々な境遇から逃れた人との会話を通じ、再び適応社会に戻るのか、あるいは逃げ続けた先に自分の生きがいを見つけるのか。逃げることが簡単ではない世の中に、自らの生き方を選定できる道を設計することで、今まで助けることのできなかった人々の感情を救うことができるのではないか。逃げることは必ずしも間違いではなく、それぞれの選ぶ道が正解となるような建築を目指す。

2.敷地概要

参考敷地:東京都立川市曙町立川駅北口側周辺
(上記土地を参考にし、架空敷地として設計)敷地面積:16200m?

3.設計コンセプト

 都市の隙間を利用し、建物に寄生する空中回路を提案する。この道の上では誰もが平等で、今まで街中を歩くだけでは気づかなかった人々の苦しみや悲しみの感情が、この道を通して可視化が可能になる。道を歩く中で、本やアート、自然とのふれあいや人との出会い、自身との向き合いを誘発し、人生設計ができる道となる。

4.設計計画

 主に「1stplace」「2ndplace」の建物内からアクセスが可能であり、対象者を制限するため地上からのアクセスは不可能である。既存の建物に対し、三角形の床スラブから構成される空中回路(escape)が寄生する。自宅や職場から都市の隙間に飛び出す部分を「1.5place」「2.5place」とする。

i)本やアートとの出会い

道中に本やアートが散らばり、惹かれるものとの出会いが想定される。ここから同じ興味を持つ人同士の関わりも期待する。

ii)自然とのふれあい

色鮮やかな植栽が点在しており、都市の中では感じることの少ない自然の豊かさを実現する。

iii)人との出会い

普段の生活では関わることのない違う職場の人が、各々悩みを抱えながら出会うことで、相談や交流を促し、今後の人生設計において影響をもたらしていく。

iv)自己との向き合い

現状に必死な状態から切り離された道の上で、本当にしたいことや夢をもう一度考え直す機会がつくられる場とする。

(図1)配置イメージ



2003-2025, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status:2025-02-16更新