Space Design Labo, JISSENUniv.
2024年度卒業研究 空間デザイン研究室 中井優希
学校空間で過ごす時間は、学童期~青年期における生活の中で大きな割合を占めており、人が成長する過程に大きな影響を与えている。本研究では、大学生に対するアンケート調査を行い、小学校~大学に至る15年におよぶ学校生活の中で、どのような場面が記憶に残っているのか、どのような学校の環境要素が記憶と結びついているのか、考察する。
2024年12月に、実践女子大学生活環境学科の学生を対象として、質問紙を用いた調査を行った。簡単なアンケートに加え、小学校~大学において記憶に残る場面を2~3場面抽出してもらい、簡単なスケッチを描き、そのときの様子や記憶に残る理由を尋ねた。73名の回答者から187場面の回答を得た。
学校生活において最も記憶に残る時期は、小学校?大学よりも、高校?中学時代に集中した(表1)。記憶に残る理由は、「部活を頑張っていた」が最も多く、次いで「仲の良い友達がいた」「生活が充実していた」「多くの思い出がある」「クラスの仲が良かった」等が挙げられた。
調査で得られた場面数(表2)を空間ごとに分類すると表3のようになる。小学校はグラウンド周り(遊具や動植物)に記憶が集中し、大学では研究室 が半数近くを占める。中学?高校は、場面数が増えるとともにバリエーションも増え、教室?特別教室?体育館などの用途の明確な空間だけでなく、廊 下やホール、中庭や屋上など、多様な空間が記憶されていた。
学校本来の機能である「学び」の場面よりも、日常の中での多様な場面、とくにポジティブな感情をもたらす場面が記憶されている。小学校では「遊び」の場面が半数近くを占めていた。中学?高校になると、部活動等による「活動」の場面、および友人との「コミュニケーション」の場面が突出する。とくに運動部や吹奏楽など、連日練習があるような部活ほど強い記憶となって結びついている。高校になると、日常的な「生活」の場面や、印象的な「風景」なども増え、バリエーションが豊かになる。
記憶に残る理由やエピソードに注目すると、「コミュニケーション」の場面も、みんなで集まる、自分たちだけのたまり場、活動の合間にくつろぐ、自然と人が集う、偶然人に出会う、他の活動を眺めながら話す等、多様な場面に分類できる。
生活の中で日常的に繰り返し行う行動や、「楽しい」「やりがいを感じる」といったポジティブな感情は、一般的に記憶に残りやすい。また、特別な空間や非日常的体験が記憶されることもある。
中でも最も強い影響を与えるのは他者との関係であり、それはさまざまな空間要素と関わっている。教室やグラウンド等、機能的に設定された空間だけでなく、(i)隔離、(ii)隙間、(iii)眺め、(Iv)活動の周縁、(v)流れの脇、(vi)繋ぎ、(vii)中心など、その時々の要求に応じて自分たちで見出した空間が選択され、記憶に結びついていることが覗われる。
(表1)最も記憶に残る時期
(表2)得られた場面数
(表3)空間ごとの場面数
2003-2025, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status:2025-02-16更新