Space Design Labo, JISSENUniv.
2024年度卒業研究 空間デザイン研究室 関田杏美
私の地元、群馬県渋川市にある伊香保温泉石段街は、バブルを境に衰退している。旅行の需要が大人数での宴会から、少人数での休養へと移り変わったことも要因の1つである。また、その後のコロナの影響で多くの飲食店が閉業し、過去の賑わいは想像できないものとなっている。それに伴い廃墟や空き家が多く見られ、観光客も目にする状態となっている。
本制作では、人が集まる石段街の影となってしまった空き家の集落を、観光客と地域住民が「通う」ことによって生活や体験が作り上げられていく、観光と生活の間となる旅みちとすることを目的とする。
対象敷地:伊香保温泉石段街横の一部
?敷地の特徴
周囲を大きな旅館で囲われており、石段とも隣り合っている。地形は、この地のみ窪んでおり下部に視界を遮るものがないため山々を眺める事ができる。現在は小さな空き家が立ち並び、手が行き届いていないと感じる。旅館の寮や精肉店跡、商店跡が見られ、かつては観光と生活が入り組んだ場所だったのではないか。
?敷地で起きている問題点
A.残された廃墟や空き家石段街から見える路地裏には廃墟や空き家が多く存在している。これらは訪れた人に寂しさや廃れた印象を与えている。
B.滞在時間?インバウンド伊香保温泉は都市近郊にあるため、日帰りなど気軽に楽しめる温泉地である。しかし、インバウンドに繋げるためには、観光時間での充実した時間や体験によってリピート率を上げることが必要である。しかし観光客数は減少し続け、最盛期の3分の1程度となっている。
現物の空き家の敷地9割を活用し、壁や床?屋根を改装?補修して空間を作る。
建物間をルーバーで囲い、支柱を建てることで人が歩き回る事ができる箇所を可視化した。ルーバーで囲むことでその下にもテリトリーがはみ出し、この地での生活を想像しやすくなることを期待している。建物が密集しているこの地の特徴である、閉鎖的で「迷子になる感じ」を表現した。また、中期滞在施設の中心に観光客や地元の人も共有することのできる温泉と飲食店を入れ込み、観光と体験そして生活を繋げるアプローチとした。
伝統、文化、歴史、新しい伊香保を体験できる工房や温泉施設。体験を重ねることで形成されるコミュニティ、そしてその体験を続けるための中期滞在用のレンタル住居。ルーバーや支柱には来たときに植物を植えていく。
?工房
郷土料理の手づくり体験、ガラス細工や食器、こけしやだるまなど。
?温泉施設
観光客も地域の人も自由に利用できる大きな温泉施設と、小さな露天風呂のみの静かに隠れた貸切り温泉。
?中期滞在用のレンタル住居
水回りや寝室、クローゼットなど生活に必要な設備を備えた平家を3日から週間単位でレンタルできる。1.2人用と2人用、広い2人用と4人用があり、滞在しながら伊香保での生活を体感してもらう。
(図1)対象敷地
(図2)ルーバー下の様子
(図3)レンタル住居の様子
2003-2025, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status:2025-02-16更新