卒業研究要旨(2024年度)

「無料塾」の運営実態と社会的役割

2024年度卒業研究 空間デザイン研究室 浮田采希?杉町萌絵

1.研究の背景と目的

 近年、経済的理由で学習支援を受けられない子どもたちが増加し、地域社会における教育格差が問題となっている。本研究では、東京都内の4つの無料塾の運営方法、成果、課題を分析し、無料塾の社会的役割を考察する。

2.無料塾とは

 無料塾は、経済的に困難な家庭の子どもたちに学習支援を行うために設立されたものである。

3.研究方法

 本研究は質的調査を採用し、東京都内の複数の無料塾を対象にインタビューを行った。運営者やボランティアへのインタビューを通じて、各塾の運営実態や社会的役割、直面している課題を明らかにしている。

4.主要な塾の運営実態

a.中野よもぎ塾:経済的困難を抱える家庭の子どもたちを支援。90名のボランティアが参加し、学力向上に加えて自己肯定感の向上も促進。

b.練馬つくし塾:ウチダハウス社内で運営され、自由な学習環境を提供。少人数制で、個別支援を重視。

c.八王子つばめ塾:震災後に設立され、学力支援に加え、生活支援や奨学金制度を提供。地域社会と密接に協力し、全国の無料塾に良い影響を与えている。

d.中野つむぎ塾:不登校や障害を持つ子どもたちに特化した支援を行い地域社会とのつながりを重視。

5.結果と課題

 各塾は学力向上を達成しているが、共通の課題としてボランティアの教育や柔軟な支援体制の強化、広報活動の強化が挙げられている。特に、ボランティアへの指導法の研修や支援範囲の拡大が重要である。加えて、資金調達の方法や学習スペースの確保も持続可能な運営に向けた課題となっている。

6.考察

 無料塾は、学力向上にとどまらず、子どもたちにとって心理的?社会的支援を提供する重要な「居場所」を作っている。特に、貧困家庭や学習環境が限られた子どもたちに安心感を与え、自己肯定感を高める役割を果たしている。しかし、持続可能な運営にはいくつかの課題がある。ボランティアの質を向上させる為の研修や、柔軟な支援体制の強化が必要である。また、資金調達や学習スペースの確保も重要な問題であり、地域社会や企業との連携強化が不可欠と言える。これらを改善することで、より効果的な支援が可能になるだろう。

7.結論と意義

無料塾は、地域社会における教育格差解消に貢献し、学力向上だけでなく、子どもたちの社会的?心理的支援にも寄与する一方で、持続可能な運営には多くの課題があることがわかった。無料塾は単なる学習支援の場にとどまらず、子どもたちに安心感と自己肯定感を与える重要な「居場所」を提供しており、地域社会における重要な役割を果たし続ける必要があると考える。

(表1)インタビュー結果の比較



2003-2025, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status:2025-02-16更新