Space Design Labo, JISSENUniv.
2025年度卒業研究 空間デザイン研究室 東明暖
私は散歩の中で新しい風景に出会うことを好み、とくに Y 字路のある風景に強く惹かれてきた。Y 字路には「2 つの道が分岐する形状」による、他の街路にはない独自の魅力がある。本研究では、Y 字路のある風景に潜む、複雑な感情をもたらす魅力に迫るとともに、日常の風景をより豊かに読み取るための手がかりを得ることを目指す。
街歩きによるリサーチ及びY字路を扱う文献やウェブサイトから、自身が魅力的だと感じるY 字路を収集した。 収集した写真をもとに、角地や形状、道の比較などの視点からY字路を読み解く。
収集したY字路について、 魅力や印象を言語化し、そこから抽出したキーワードを「Y字路空間の特徴」「Y字路から受ける印象」「Y字路に対する感情」の3つに分類した。そこから「Y字路空間の特徴」として、印象や感情との関係を踏まえ、以下の6つのタイプを抽出した。
この Y 字路には、2 本の道のどちらかへ進むことを促すのではなく、分岐点へと引き寄せ、人が集まり、留まり続ける特徴がある。角地の建物は周囲に馴染みながらも明瞭な輪郭を持ち、人々の継続的な関わりによって地域の目印として定着し、シンボル性が形成される。
このY字路には、角地の建物が2本の道の壁として連続し続いて見えることで、道空間が立体的に認識される特徴がある。その中には、空間に包まれ、ひとつの世界に入り込む没入型と、視線が道の先へと導かれ進行を促す誘導型の2つの傾向が見られる。
このY字路には、 道の2択性が強調され,直感的に「選択を促す」タイプと、先を想像しながら主体的に道を選ぶ「進んで選択する」タイプがある。 その他にも、角地の建物が行き止まりを強く意識させ、選択を強制するY字路などが見られる。
この Y 字路には、2 本の道幅や雰囲気の差異に加え、角地の建物や植栽が境界や壁として機能することで、異なる2つの空間が並存しているように認識される特徴がある。
このY字路には、道幅?明るさ?白線などの空間要素の差異によって、片方の道が裏道や抜け道のように認識される特徴がある。
このY字路には、他のY字路とは異なり、空間そのものに動勢が感じられ、Y 字路が生きもののように知覚されたり、水や風の流れを想起させたりする特徴がある。
Y 字路は、いずれか 1 つの要素に単純化して分類できるものではなく、複数の要素が組み合わさることで成り立っている場合が多い。それぞれの要素やもたらす印象?感情が組み合わさることで、各Y字路の特有の魅力として感じられる。(表1)
Y 字路の風景から受ける印象は、その構成要素が人の意識や感情に単純に作用するのではなく、複数の感情を同時に引き起こし、ときには互いに矛盾する感情が重なり合うような複雑性を有している。本研究における読み解きとは、自らがY字路の風景の中へと入り込み、その空間を探索しながら、奥行や歴史、さらにはそこに広がる世界を読み取ろうとする能動的な営みである。
(表1)複数の要素が組み合わさったY字路の事例
事例1 東京都豊島区 富士見坂?日無坂
2つの世界:時間の流れが異なる2つの世界一気に下へと駆け下りるような加速感のある右の道と、時空の歪みのようで時間の進みが緩やかに感じられる左の道
選択を促す:異なる2本の道により2択性が強調され、どちらへ進むのかという選択を促される。目的地よりも、感覚に基づく直感的な選択が生じる。
事例2 東京都渋谷区 渋谷中央通り
シンボル:角地を利用した看板は、待ち合わせの目印として機能し、安心感を与える。道の先へ進むのではなく、留まったり、集まったりする行為を通してシンボル性が生じる。
立体的:周囲の高い建物が、壁のように連続することで、包み込むような立体感を帯び、ひとつの「街」のようなまとまりを形成している。飲み屋街の入口として人々を迎え入れるような性質を持つ。
2003-2026, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status:2026-03-11更新