卒業研究要旨(2025年度)

「通過点」から「拠点」へ ~居場所としての藤沢駅~

2025年度卒業研究 空間デザイン研究室 古舘佳奈

1.研究目的

 現在の日本の駅は、機能性や効率性が重視され、利用者の動線が最適化されている一方で、人と人とのつながりや温かさを感じにくい空間となっている。通勤や通学など日常的に多くの人が利用する場であるからこそ利便性は重要であるが、その反面、人と人が関わる余白が乏しく、通過するだけの場所となりがちである。本来、駅は多様な人々が集まり、日常の中で偶然の交わりが生まれる可能性を持つ都市の結節点である。

 そこで本制作では、現在の駅のあり方を見直し、効率性に加えて、人が自然に関わり合える居場所としての機能を併せ持つ駅空間のあり方を探ることを目的とする。異なる人々が共存し、出会い、滞在したくなる駅をデザインすることで、駅を街の新たな拠点として再定義し、地域に温かなつながりを生み出すことを目指す。

2.敷地概要

対象敷地:神奈川県藤沢市藤沢駅
JR藤沢駅 小田急線藤沢駅
敷地面積:36,520㎡

現地調査

 藤沢駅は、特にJR線と小田急線間での乗り換えの人々が多く、混雑のピーク時には人が殺伐とした空気で通勤、通学を行っている。休日には湘南を訪れる人々や都心に向かう人で多くの人が利用している。 周辺には飲食店や商業施設などの建物も多く、人が集まる場所なのに対して、駅の空間には利用者が滞在出来る空間や居場所となる空間はない。

3. 設計手法

3-1.行為の挿入による駅空間の再定義

 駅機能を前提とせず、食事や滞在、散歩など、本来駅構内では行われない行為を意図的に挿入することで、電車の乗り降りが主な行為として重視されている駅空間に、滞在の余白を与え、駅を単なる移動のための交通施設から街の拠点へと再定義する。

3-2.改札を排した断面構成による境界の溶解

 改札による水平的な分断を廃し、床レベルの段差や緩やかな勾配?重なり合う床によって上下方向に空間を構成することで、駅と街、改札内外、JR線と小田急線の間に存在していた物理的?心理的な境界を曖昧にする。

3-3.多角形を利用した空間構成

 多角形の形態を採用することで、導線を特定の方向に固定せず、JR線?小田急線および周辺の街へと複数方向に開かれた空間構成とした。

 同時に、多角形によって生まれる複数の角は、視線が収束しやすく、人が落ち着いて滞在することのできる居場所となり、現在の駅における通過点にすぎない空間構成を人が滞在し、関わり合うことのできる空間へと転換する。

4.まとめ

 これにより、駅内部において通過と滞在という異なる行為、駅利用者と非利用者という異なる立場の人々が立体的に混じり合う場を生み出すことができる。人の視線や気配、活動が断面的に交差することで、駅は移動のための通過点ではなく、日常の中で自然なつながりが生まれる街の新たな居場所として再構築される。

図1 対象敷地
図2 ダイアグラム



2003-2026, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status:2026-03-11更新