Space Design Labo, JISSENUniv.
2025年度卒業研究 空間デザイン研究室 細谷朋花
現在多くの空港は、安全性や効率性を最優先に計画されてきた結果、どこも似たような無機質で均質な空間になりやすく、利用者にとって「飛行機に乗るためだけの場所」、いわばただの通過点として扱われがちである。そのため、空港で過ごす時間に特別な体験や魅力が生まれにくく、飛行機を利用しない人にとっては訪れる理由さえほとんどない。
そこで本提案では、出発や到着、その他の空間が様々な形でつながる動線と、空港と複合施設を結びつけた空間構成を計画することで、利用者以外も訪れ、自然に滞在したくなる、豊かな空間をつくることを目指す。このような仕組みにより、空港を単なる移動のための場所から、過ごす時間に新しい魅力を感じられる場へと転換することを目的とする。用途:空港
対象敷地: 東京都立川市緑町
陸上自衛隊立川駐屯地
立川駐屯地は東京都の中央に位置し、JR中央線をはじめとする4つの在来線が交差する高い交通利便性を有している。都心と郊外の中間に位置するこの立地は、広域からのアクセスを可能にすると同時に、多様な人の流れを受け止める都市的なポテンシャルを備えている。また、「国営昭和記念公園」に隣接した緑豊かな環境を有し、都市の利便性と自然環境が重なり合う希少な場所である。
敷地内には約900mの滑走路を有する立川飛行場があり、本計画ではこの立地特性を生かし、敷地内に空港を建設すると仮定する。
本計画では、現在の空港のような到着?出発?滞在の場などの機能を、単純な上下階で分断するのではなく、スキップフロアによって断面的にずらしながら構成している。レベル差を設定することで、移動に伴って視線や空間の関係が連続的に変化し、上下階の気配を感じられる立体的な空間を生み出している。この断面的な操作により、空港内部に一体感と奥行きが生まれ、移動そのものも空間体験となる構成を目指している。
飛行機を屋外に切り離された存在としてではなく、建物内部に取り込むことで、ターミナル空間と一体的になるように構成している。スキップフロアによって形成された各レベルや動線に対して飛行機が近接する関係をつくることで、利用者は移動の途中で上階?下階?斜め方向など多様な角度から飛行機を認識することになる。
また、飛行機が常に視界のどこかに存在する状況をつくることで、特定の展望地点に立ち止まって眺めるのではなく、歩く?上る?下るといった行為の中に飛行機を見る体験が自然に組み込まれていく。こうした視覚的な体験を積み重ねることで、搭乗前後の限られた時間だけでなく、空港内で過ごす時間そのものが、「飛行機と過ごす空港時間」を感じられることを意図している。
到着口や出発ロビーといった主要機能を一箇所に集約するのではなく、建物内の各所に分散して配置することで、利用者が目的地へ向かう過程で必然的に複数の空間を通過する構成としている。これにより、移動は最短距離を直線的に進むものではなく、状況に応じて異なるルートが選択され、人の流れに重なりやずれが生まれる。
スキップフロアは、このように分散した機能同士を断面的につなぐための構成として用いられている。上下方向への移動が単なる階移動として処理されるのではなく水平?垂直の双方に広がる立体的な回遊性から視線の変化を楽しむことができる空間が生まれる。こうした構成によって、空港は目的地へ急ぐためだけの通過空間ではなく、巡りながら滞在することのできる場所へと性質を変えていくことを意図している。
図1 敷地写真
2003-2026, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status:2026-03-11更新