Space Design Labo, JISSENUniv.
2025年度卒業研究 空間デザイン研究室 真壁由佳
一般に、マンションなどの集合住宅では、セキュリティやプライバシー意識の高まり、単身世帯の増加により、住民間の交流が生まれにくいといわれている。
本研究の目的は、住民同士のコミュニティが長期的に継続しているマンションを対象に、そのコミュニティの形成と維持がどのような要因や仕組みによって支えられているのかを明らかにすることである。
表1のマンションを対象に以下の調査を行った。
1)居住者を対象にアンケート調査(8月(52人)、12月(25人))
2)中庭の観察調査(4月~1月)
3)共用空間の利用件数データ収集(過去3年分)
4)管理会社ヒアリング
5)クラブ委員会への参与観察
マンション内交流の実態について、既往研究と同項目で調査を行い比較した(図1)。親しい知人の数や顔見知りの程度など結果に大きな差がみられ、対象マンションでは居住者間の関わりが相対的に深い傾向が確認された。
理事会やクラブ委員会への参加経験を持つ住民が大半で、その多くは管理や運営を通して住民間の横の繋がりができたと回答している(調査1)。住民の運営参加がマンションコミュニティに寄与していると考える住民も約9割を占めており(調査1)、住民主導の運営体制が交流の継続を支えている(調査4)。
対象マンションは他と比べイベントの開催頻度が高く活発であり、多様な世代が積極的に参加している(調査4)。イベント後の交流が「増えた」と感じる住民が半分を超え(調査1)、イベントが関係形成の明確なきっかけとなっていることがうかがえる(調査5)。
マンション内に設けられた様々な共用空間は年間通して高頻度で利用されており(調査3)、8割以上の住民は頻繫に利用している(調査1)。こうした利用を通じて顔見知り関係が蓄積され、住民間の距離を縮める役割を果たしている。竣工時のイメージ通り頻繁に利用されており(調査4)、空間の維持?価値向上にもつながっている。
マンション内で日常的に顔を合わせる住民が多く、約7割が中庭での交流の発生を実感しており、中庭が偶発的な日常交流の基盤として機能している(調査1)。観察調査から、中庭での子どもやペットを介した交流が世代を超えて広がる様子が確認された。また、子どもたちは事前に約束を取り付けることなく中庭での遊びを通して集まり、性別や学年の枠を超えた新たな関係が生まれている様子がうかがえた(調査2)。
対象マンションの20年以上にわたるコミュニティ持続の要因として図2の4つが挙げられた。定期開催されるイベントなどの意図的に設けられた交流や、住民主導の運営参加といった機会によって住民コミュニティのきっかけが生まれ、その関係が目的を持つ共用空間や無目的な中庭といった日常的に利用される空間において継続?蓄積されるという、多層的な構造によって支えられている。このような構造が、住民同士の関係を一時的なものにとどめず、コミュニティを日常の中に定着?持続させる要因と考えられる。
表1 対象マンションの概要
所在地?竣?:埼?県 S市(2001年6?竣?)
構造?規模:SRC14階建て 429?
中庭: 普段は?由に使え、イベントでも利?される円形の中庭。共?施設にも接する。外部の?も利?可。
共?空間 :共?施設として、ゲストルーム、スタディルーム、AVルーム、リビング、サロン、キッズルーム、クラフトルーム、カルチャールーム等
イベント :季節の祭り、防災訓練、除草作業、ラジオ体操、餅つき、ペットふれあい会等。四季ごとにイベントが開催され、20年以上継続して実施されている。
運営体制 :管理会社によるライフパーサー、ライフマネージャーが常駐。住?は理事会とクラブ委員会を組織して運営に参加。?年交替。
図1 マンション内の親しい知人の人数の比較(グラフ)
図2 コミュニティ持続の要因
参考:竹内幹太郎『マンション居住者の地域コミュニティに関する意識の考察』土木計画研究?講演集(2014年11月)
2003-2026, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status:2026-03-11更新