Space Design Labo, JISSENUniv.
2025年度卒業研究 空間デザイン研究室 菅井希愛
青梅市にあるコミュニティカフェ「KTホールぶらりカフェ」では子ども食堂が開かれ、日常的なカフェ空間の中で多様な関わりが生まれている。本研究では「KTホールぶらりカフェ」を対象とし、参与観察及び聞き取り調査を通して、子どもにとっての居場所としてのあり方と、人や社会との関係がどのように形成されていくのかを明らかにすることを目的とする。
調査対象の概要を(表1)に示す。調査は2025年9月~11月にかけて、平日10回、休日4回にわたる1日観察調査(10時~17時)、利用者へのインタビュー調査(小学生10人/高校生4人/大人4人)、スタッフへのインタビューまたはアンケート調査(7人)を行なった。
幼児から大人までが同じ空間で過ごし、遊びや宿題、習い事前の利用、昼食やお菓子を買いに来るなど目的や滞在時間を限定しない場の使われ方が観察された。そのような利用の中で、ボードゲームをする子どもとスタッフに一人で来た男性が加わる場面や、食事をする子ども同士の会話にスタッフが時折参加する場面など世代を超えた関わりが確認された。
ぶらりカフェについて「落ち着く」「楽しい」「ご飯が美味しい」といった意見が多く、安心して過ごせる場であり、特別な目的や理由を必要とせずに利用できる場と言える。友達同士やスタッフなど、それぞれが自分に合った距離感で人と関わっている。初めは、友達や兄弟、親に誘われて来始め、次第に関係性が広がっていく。さらに、カフェの外でも挨拶をするなど、カフェ内での人の関わりが、地域との関係へと広がっている。
スタッフは共通して「人と関わりたい」「役に立ちたい」と言う思いからボランティアとして関わっており、子どもや大人、地域住民と自然に交流しつつ、活動を通じて自信やスキルを得ている。障害があっても任される仕事や、子どもが話しかけてくれる体験は「頼られる側」としての実感になり、安心感や自己肯定感にも繋がっている様子がうかがえた。
ぶらりカフェの居場所としての特徴を図に示した。この場では、来る理由や滞在の仕方が問われない自由さがあり、まず「ここに居てよい」という安心感が生まれる。その安心感を土台として、食事をとる、決まった時間に立ち寄るといった生活習慣や、スタッフや利用者との軽い会話や遊びといった交流が、無理のないかたちで生じていく。さらに、手伝いやボランティアの役割を担う経験を通して、自分がこの場の一員であるという感覚が育まれていく。(ただし、これらの経験は、利用者が過ごす中で重なり合いながら自然に生まれるプロセスであり、関わらないことも、関わりを深めることも個人の選択として許容されている。)
そしてその経験は、カフェ内部にとどまらず、地域イベントへの参加や外部の人との関係づくりなどを通して、カフェを拠点に外へと関係が広がっていく。一方、うまくいかない時や疲れた時には、再び戻ることもできる。ぶらりカフェに戻ることができるという安心感に支えられながら外との関わりを経験することで、その経験は社会へ向かう自信として蓄積されていく。この行き来が、社会との距離を無理なく調整することを可能にしている。
ぶらりカフェは社会に出ることを一方向に促す場ではなく、行き来を前提とした中間的な居場所として機能している。「ただ居る」ことから始まり、自由?安心?交流?役割が重なり合う環境の中で、利用者は小さな成功体験や承認を積み重ねていく。人との関わりや役割、外部との接点へと経験が広がっていくプロセスを内包した居場所である。
(表1) KTホールぶらりカフェの概要
運営主体:NPO法人子ども劇場西多摩
施設形態:コミュニティカフェ兼子ども食堂
営業日時:水曜日?日曜日10:00?17:00
食事提供(18歳以下): 12食(日替わりランチ/ケーキ/ジュース)
(図1)KTホールぶらりカフェの居場所形成
2003-2026, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status:2026-03-11更新