2023年度卒業式 式辞?祝辞
式辞
実践女子大学 実践女子大学短期大学部
学長 難波 雅紀
うららかな春の日ざしに霞がたなびく季節となりました。ほほを伝わる風も和らぐ今日、卒業式を迎えることができました。修了生および卒業生の皆さん、修了、卒業おめでとうございます。お祝いを申し上げます。また、ご列席を賜わりました関係者の皆様にも、心から祝意を申し上げたいと存じます。
さて、世界では、現在、グローバル化が進む中、国々が相互に影響し、依存する度合いが急速に高まっています。貧困や紛争、難民、人権の抑圧、環境破壊など、国際社会全体に係わるものとして協力して取り組むべき課題も山積しています。
本日、修了、卒業を迎えた皆さんは、こうした社会状況が急速に変化する中で、学生生活全般にわたり、今までとまるで異なる経験をしてきました。その厳しい環境において、皆さんは、以前と違ったものの見方をしていると感じたことはなかったでしょうか。自分にとって本当に意味のあるものは何かを、見つめ直すことがなかったでしょうか。自分と向き合うことによって皆さんは、新たな価値を発見したかも知れません。
20世紀アメリカの詩人ミュリエル?ストロードは、新時代を生きる人々に向けて、「敷かれた道を進むより、道なきところに自ら道を築いて進め」と書いています。この言葉は、新たな視点から諸課題に果敢に取り組み、豊かな未来社会を創造していく、21世紀の私たちへの励ましと受け取ることもできます。
学祖下田歌子は、「女性が社会を変える、世界を変える」という信念に基づいて本学を設立しました。私は、皆さんがこの建学の精神を受け継ぐとともに、本学で培った実践力と、経験をとおして得た新しいものの見方によって、社会を改革し未来を切り開いていくことを期待します。
さて、皆さんは、これからもたくさんの人と出会い、様々な経験を積んでいくことになりますが、出会いや経験の数だけ、味わう喜怒哀楽も多くなっていきます。誰かと喜びを一緒に分かち合いたい、誰かに悩みを分かって欲しいと思うことも多々あるに違いありません。そんな時、友だちであれ、家族であれ、心を開いて話を聞いてくれる他者の存在ほど大切なものはありません。そして、同じように他者である友だちや家族が皆さんに喜びや悩みを打ち明けるのも、皆さんが心を開き、それらを理解し、共感しようとするからです。皆さんもまた、他者にとっての大切な存在なのです。
人が他者に心を開けるのは、自分とは違う考えを受け入れ、他者の欠点や失敗を厳しく責めずに許そうとする、寛容の精神があるからです。21世紀はグローバル化とダイバーシティの時代です。どんなフィールドで活躍するにしても、多様性を認め、様々な価値観と共生できる力が不可欠です。その力を育むのも寛容の精神に他なりません。
「寛容こそ文明の唯一のテストである」と言ったのは、19世紀イギリスの作家アーサー?ヘルプスですが、今日、必要とされているのも、私たち一人一人の寛容の精神なのだと思います。私は、皆さん一人一人が、寛容の精神を持って他者との関わりを大切にしながら、自分の可能性を活かし、充実した人生を送ることを、強く願っています。その想いを餞に、式辞を結びます。
祝辞
学校法人実践女子学園
理事長 山本 章正
皆さん、ご卒業おめでとうございます。実践女子学園を代表して、心よりお祝い申し上げます。
本日、皆さんは本学を巣立ち、いよいよ自立や主体性の実践の場となる社会に踏み出す、節目の時を迎えました。
これから、社会人としての新たな生活が始まろうとしています。新しい目標に向かって羽ばたいていってほしいと思います。
一方で、今回のパンデミックからもわかるように、自分の力ではどうしようもできないことが、これからの人生の中で繰り返しやってきます。約15年前のリーマンショック、地震?台風を始めとする自然災害、会社の浮き沈みなどです。大きな不安や試練と感じることも多いと思いますが、皆さんには、挑戦する若さ、何事も経験として乗り越えられる若さがあります。どんな時も前を見て進むことを心から願っています。
さて、私から一つ、これからの人生の多くの時間を費やす、「仕事」についてのお話をしたいと思います。
社会では、自立自営など、社会人として求められる厳しい心構えも大事ですが、私は皆さんに、社会で「幸せ」になってほしいと思っています。ですから、どうしたら仕事を通じて、幸せに生きられるかを考えてみました。
社会に出て、仕事をもらい、その仕事の一流を目指せば、「充実感」という幸せが返ってきます。お客様や職場の上司?同僚など、常に相手の立場で最善を考えれば、誠意が伝わり頼りにされる存在になります。仕事に関わる小さな変化に気づく感受性が身につけば、円滑な人間関係を築けるだけでなく、お客様や社長?上司の発言の背景まで理解できるようになり、よい仕事や改善に結びつきます。
実は、会社は人を育ててくれる道場です。上司が教え、あなたが深く考えて実現する成長の場です。人には、一生成長したい、という強い気持ちがあり、成長を実感することで、人生の幸福度が高まります。
これまで、学校の中で成長してきたように、これからは社会の中で、多くの学びを得て、成長し続けてほしいと思います。
皆さんの輝かしい未来をお祈りして、お祝いの言葉といたします。
ご卒業、誠におめでとうございます。
祝辞
一般社団法人教育文化振興 実践桜会
理事長 大和 惠子
春光うららかな良き季節に、ご卒業を迎える卒業生の皆様、そして保護者の皆様、本日はご卒業おめでとうございます。心よりお祝いを申し上げます。
実践桜会は、実践女子学園すべての卒業生の同窓会です。学園創立の2年後、1901年(明治34年)に下田歌子先生が設立して本年で123年になります。実践桜会に卒業生の皆様をお迎えできますことを大変嬉しく思っております。
下田歌子先生は、女性教育の先駆者として、一早く女性の地位向上を目指し、一般女性の教育によって家庭も変わり豊かな社会が作られると考え、教育と徳育により女性としての品格を身につけ、さらに実践的な学業を授けることで自活の道を立て、社会に貢献できる人材を育成しようとしました。そして、女性の清らかな徳性とゆたかな情操は、社会の悪弊を正し周りの人々を幸せにして行く力を持っていると、女性の資質を信じておられました。
これから目まぐるしく変化する多様性社会を生きて行く皆様は、母校で学んだ知識や技術、経験を土台に、更に社会での新しい学びを通して、建学の精神である「女性が社会を変える、世界を変える」を実践して行っていただきたいと思います。これからも、友人や先生方との交流を大切に育んでいただき、皆様の人生が豊かで実りあるものになりますようにと願っております。
最後に、同窓会である実践桜会の活動を少しご紹介させていただきます。一般社団法人として、卒業生の親睦をはかり、住所変更などの名簿管理、卒業学科ごとの科会活動、各地の支部活動、そして広く社会に向けた貢献事業として、「母校への助成、奨学金の給付(母校への「実践桜会奨学金」、下田先生が清国留学生を受け入れた精神に倣い、東アジアからの留学生への「国際交流基金奨学金」)生涯学習活動、会館貸室」事業などを行っています。クラス会の開催などにも是非会館をご利用ください。皆様をいつでも歓迎いたします。
卒業生の皆様のご健勝をお祈りして、お祝いの言葉とさせていただきます。
本日はご卒業、まことにおめでとうございます。