【卒業生×在校生 対談インタビュー】第45回学生設計優秀作品展レモン賞受賞と本学での学び
「衣?モノ?住」を幅広く学べ、自由に選択できることが生活環境学科の魅力。
基礎から学んだ建築の知識を活かし、夢へと前進し続ける。
生活環境学科を2022年3月に卒業した山岸幹子さんは、2022年10月、老舗画材店として知られるレモン画翠主催の「第45回学生設計優秀作品展(通称レモン展)」で、優秀作品に贈られる「レモン賞」を受賞しました。山岸さんは2022年4月にも埼玉県卒業設計コンクールで「埼玉県住宅供給公社賞」を受賞しており、両賞のダブル受賞は本学初の快挙です。山岸さんは、生活環境学科の魅力について「衣?モノ?住を幅広く学べ、自由に選択できること」だと語りました。このインタビューでは、山岸さんにレモン賞受賞の感想や本学での学びについてお話を伺いました。
(聞き手 文学部美学美術史学科4年?遠藤花連)
山岸幹子さん(写真:左)と遠藤花蓮さん(写真:右)
山岸さんへのインタビューは2022年11月20日、山岸さんが学生時代に通った日野キャンパスの「建築系ライブラリー」で、実際の受賞作品を前に約1時間にわたり行われました。
今回受賞した「レモン賞」は、1978年から40年続く卒業設計作品展で優秀な作品に贈られる賞。今年度は全国55大学?専門学校55校の建築系73学科から応募があり、山岸さんを含む11人が同賞を受賞しました。
受賞を受けて

遠藤 この度はレモン賞受賞おめでとうございます。「埼玉県住宅供給公社賞」に加え、今回レモン賞も受賞した今の気持ちをお聞かせください。
山岸 大変嬉しく光栄に思っています。未だに信じられない気持ちでいっぱいです。
「若者」と「イヤホン」からヒント

遠藤 受賞作品は、「イヤホンで紡ぎ出す~歩みと共に広がる空間~」がテーマでした。どのような作品なのでしょうか。
山岸 私の最寄り駅である、さいたま市の西大宮駅をモチーフにしています。この駅の利用者は若い世代が半分ほどを占めていて、電車での移動時や歩行中に「イヤホン」を使用しているのを多く見かけます。そこで、イヤホンを日常的に使っている閉鎖的な若者が、イヤホンからの音声によって地域との結びつきを強めてもらえればと思い、西大宮駅、周辺の既存施設、若い世代に向けたさまざまな施設を1カ所に集めた駅直結の複合施設を設計しました。
遠藤 地域の人と密なコミュニケーションをとる若者は少ないですもんね。この作品を作る上で最も大事にしたところ、苦労したところを教えてください。
山岸 近未来的な考え方を重要視しました。若者たちがよく目にする光景が再現できたかと思います。一方で、耳をふさいだ状態で、コミュニケーションはどう生まれるのかという問題にぶつかりました。みんなイヤホンに集中しいていたら会話できないじゃないですか。そこを逆手にとってどうアクションを起こすか、どう建築にアプローチするかが難しいポイントでした。

遠藤 イヤホンでの交流は具体的にどう生まれるのでしょうか。
山岸 複合施設内にある各施設の位置関係を確認する手段としてイヤホンを利用しました。模型で説明すると、ちょうど床の色ごとで施設の種類を分けています。例えば、福祉施設の近くを訪れたとすると、位置を知れるだけでなく、そこでの日常が垣間見えるという訳です。イヤホンから流れる情報をきっかけに、人と人との交流も活発になると思います。
建築を基礎から学んだ大学生活

遠藤 受賞作品は、卒業制作として研究室で作ったものと伺いました。思い出に残る研究室でのエピソードはありますか?
山岸 年明けにゼミのみんなで研究室に籠っていたことです。普段ならお正月はまったり過ごすのですが、ゼミのみんながいてくれたことで一生懸命模型づくりに励むことができました。心強かったですね。
遠藤 年明けも大学とは凄いですね。制作期間はどれくらい要したのですか。
山岸 2021年の夏から設計を開始して、年明けに模型の制作にとりかかりました。卒業制作講評会が2月中旬でしたが、完成まで本当にギリギリでしたね。家に持ち帰るには大きすぎて学校でないと作業を進めることができないんです。

遠藤 4階建ての大きな作品ですもんね。卒業制作に役立った思い出に残る授業は何かありますか?
山岸 「生活空間設計製図」です。前期に住宅、後期は施設の設計について一から学ぶことができます。
遠藤 授業の魅力や難しかった点、これから授業を受講する在学生や受験生に先輩からのアドバイスをお願いします。
山岸 自分で考えて自分でデザインしたものを形にするのは難しかったです。建築は、好きな形をデザインすれば良い訳ではないんですよ。住みやすさなどを重視しなければいけなくて。これから受講する学生にはそこを大切にしてほしいです。私は限られた時間の中で完成させることに苦労しました。ただ、将来建築系に就く人であれば是非履修をしてほしいオススメの授業です。
本学での学びを仕事に活かす

遠藤 山岸さんは現在、どのようなお仕事をされているのですか。
山岸 リフォームの企業で営業職に就いています。憧れの業界で働くことができて嬉しいです。現在は設計職ではないですが、現場での経験を活かし、いずれは設計職に携わりたいと思っています。
遠藤 夢を叶えたわけですね。本学での学びを、現在のお仕事にどのように活かされていますか。
山岸 営業をする中で、簡単な設計図をお客さんに描いてあげています。また、建築用語がすぐに分かるので、クライアントとのコミュニケーションもスムーズです。これも実践女子大学で建築を基礎から学んだお陰です。
魅力あふれる生活環境学科
遠藤 生活環境学科での学びの魅力は何だと思いますか?
山岸 「衣?モノ?住」について幅広く学べることです。私が深く学んだ「住環境デザイン分野」以外に「プロダクト?インテリア分野」「アパレル?ファッション分野」が学べ、自由に選択することができます。
遠藤 最後に、生活環境学科の受験生へメッセージをお願いします。
山岸 生活環境学科では、建築家として実績積まれているプロの先生が、鉛筆の削り方から優しく教えてくれます。建築は、誰かの人生を幸せにする、喜ばせることができる分野です。建築に興味のある方は、是非受験して、実践女子大学で学びを深めてほしいです。
取材メモ

山岸さんが手掛けた建築模型の大きさに思わず目を丸くしました。パステルカラーを基調とした4階建ての構造は、施設の椅子や植物など一つひとつ精密に表現されています。自然豊かで温かみのあるデザインに、眺めている私も思わずほっこりとした気持ちになりました。
本学初の快挙を成し遂げた山岸さんは、在学中だけでなく社会人になってからも輝く素敵な先輩でした。私はこの春、大学を卒業し、新社会人になります。学んできた学問もこれから進む道も、山岸さんとは異なりますが、山岸さんのようにハツラツとした気持ちで、実践生の誇りを胸に仕事に励もうと思います。
※このページの掲載内容は、2022年取材当時のものです。