授業紹介 解剖生理学a の教室から 「人間はちくわである」
食生活科学科教員S.K
解剖生理学は地球での生命誕生以来、数十億年のあいだずっと続いてきた進化の結晶を学ぶ学問です。しかし、みなさんの身体はあまりに複雑過ぎて、進化の結晶といわれても途方に暮れますよね。
そこで少し引いて眺めて見ましょう。人間のからだは、母親の子宮の中で、受精卵という1個の細胞が分裂を繰り返し、一歩ずつ複雑さの階段を積み重ねた結果です。発生の時間を巻き戻し、複雑になる前の形を学ぶことにより、からだの成り立ちを基礎から深く理解することが可能です。
この授業では、人間のからだの基本的な構造を「ちくわ」に見立て、解剖学的な「かたち」と生理学的な「はたらき」の関係を単純化して理解する考え方を紹介しています。
「ちくわと身体のどこが似ているの?デタラメばっかり言って???」ですって?
これでもトポロジーという数学の考え方を応用した結構真面目な見方なんですよ。
論より証拠、まず外側の薄い皮は、外胚葉という組織に由来する皮膚に対応し、環境からの様々な刺激?攻撃からからだを守る宇宙服の役割を果たします。真ん中に空いた穴の壁は、内胚葉に由来し、口から肛門までを貫く消化管と呼吸器に対応します。消化管と呼吸器は見掛けこそ全く異なる臓器ですが、環境との間で必要な物質をやり取りする点で、実はその由来も機能も兄弟関係にあるのです。最後の、外と内の皮の間を埋める実の部分は、中胚葉に由来する組織で、心臓血管系と、身体を動かすための筋?骨格系が含まれ、車で言えばエンジンからタイヤまでを合わせたものに相当します。
このように、外胚葉、内胚葉、中胚葉のそれぞれに由来する臓器は、見掛けが違っていても、機能的な特徴を共有しているのです。
ちょっと視点を変えるだけで、モノの見え方が変わると思いませんか?