塩原 みゆき先生
衣類を適切に管理するために。
洗濯?洗浄を、様々な切り口から見つめる。
塩原 みゆき
Miyuki shiobara
生活環境学科
専門分野?専攻 テキスタイル管理学、染色加工学
Miyuki shiobara
生活環境学科
専門分野?専攻 テキスタイル管理学、染色加工学
メーカーやメディア関連企業の研究所に在籍した後、本学に。これまで、衣料の手入れ?管理に関わる洗濯や洗浄などについて研究してきました。
近年取り組んだのは、洗濯で排出される繊維クズについての研究です。繊維クズについては、海洋に流出され環境汚染の一因となっているとして、自然分解されにくいプラスチックのものが問題視されています。プラスチックの繊維クズが生じる代表的な衣料素材に、ポリエステル素材のフリースが挙げられます。
家庭用洗濯機でフリース衣料を洗濯した場合、排水中にどの程度繊維クズが放出されるのか、実験しました。
すると、1回目の洗濯では多少の繊維クズが含まれていたものの、2回目の洗濯時にはあまり流出していないことがわかりました。また、目の細かい洗濯ネットを使っても、流出される繊維クズの量はネットを使わない場合とほとんど変わりがないことも判明しました。
実は、衣料になる前の生地の状態のフリースを洗濯すると、大量の繊維クズが排出されます。しかし製品化を行う企業が適切に生地の処理を行えば、製品として消費者の手に渡ったフリース衣料を洗濯してもそれほど繊維クズは出ないことが、この結果から推測されます。
また、洗濯中に衣料から出た繊維クズが排水を通じてどれだけ下水に流出するかを計測すると、ドラム式よりも縦型洗濯機の方が、流出量が少ないこともわかりました。これはそれぞれの洗濯機の構造に理由があります。ドラム式の場合は排水口にフィルターがつけられているだけですが、縦型の場合は洗濯槽内部に糸クズなどをキャッチするためのネットがつけられており、ここに繊維クズが溜まるために流出量を抑えられるのです。
フリース衣料であっても、適切な処理がなされたうえで製品化されたものであれば繊維クズの流出にそれほど過敏にならなくてもよいこと、環境負荷を考えてそれでも可能な限り流出量を抑えたい場合は縦型洗濯機の使用が有効であることが、研究の結果からわかりました。

2022年4月に本学に着任し、衣服の材料となる織物や編物、不織布などのテキスタイルを適切に管理するための洗濯や洗浄を主な研究対象とするアパレル管理研究室を主宰しています。初年度は2名の学生が所属し、卒業研究で洗濯を取り上げました。1人は「洗濯習慣」をテーマにアンケート調査を実施。「どんなタイプの洗濯洗剤を使用しているか」という設問には、約1割の方が「粉末洗剤」と回答。「洗濯洗剤に何を期待するか」という設問では1位が「洗浄力」でした。しかし、実際は液体より粉末の方が洗浄力は高いのです。洗浄力の高さを期待しながらも実態を知らないまま、使い勝手などにより液体洗剤を選んでいる方が多いことが浮かび上がりました。
もう1人は「洗濯洗剤の洗浄力」をテーマに、粉末?液体洗剤それぞれの洗浄力を調べ、液体洗剤が粉末洗剤と同じくらい洗浄力を高められるのかについても研究しました。その結果、粉末洗剤の洗浄力は、使用する水の温度に大きく依存すること、液体洗剤の洗浄力を高めるためには汚れの箇所に原液をつける予洗や、つけ置きをすることが有効であることがわかりました。使用する洗剤の特徴を把握して適切に使用すれば、より効果的に衣類の汚れを落とすことができるのです。

今後、研究室では洗濯?洗浄のほか、染色や、繊維素材を使った化粧品の評価なども取り上げたいと考えています。私が所属する生活環境学科には建築をテーマとする研究室もありますので、洗浄についてはキッチンやお風呂、トイレなどに使用する住宅用洗剤についても取り上げたいし、身体に関わる洗浄としてボディソープやハンドソープについても調べてみたい。「生活に根差していること」をベースに、身近で関心を持ちやすいことを追究し、卒業後、学生が生活者として暮らしを営む時に役立つ知識を習得してほしい、また教員としてそのためのサポートを積極的に行いたいと思っています。