お宝紹介 貴重書ツアー
お宝紹介 貴重書ツアー
図書館では大学、短期大学部の授業の一コマをお借りして、図書館見学や貴重書庫内見学を実施している。
今年度は、2023年6月7日に大学図書館学課程の「図書館情報資源概論a」(水曜4限)をはじめ、短期大学部図書館学課程の「図書館情報資源特論」(11月22日水曜5限)と、「図書館基礎特論」(12月13日水曜3限)の授業で、最新老虎机-老虎机游戏@の図書館地下1階にある貴重書庫内で貴重書ツアーを行ったのでその様子をお伝えします。
1.貴重書庫室について
図書館地下1階の貴重書庫内には、高名な英文学者である本間久雄、小倉多加志、桂田利吉の3人、直木賞作家の向田邦子、及び児童文学研究者である福田清人の旧蔵書を収蔵しているほか、極めて高額な資料、一般書架で配架しにくい和装本、古辞書、原稿等の一点物資料、洋古書、マイクロ資料等を別置している。
この貴重書庫室は通常は立入禁止となっており、資料の閲覧についても「特殊コレクション閲覧?複写許可願」を1週間前までに事前申請することになっている。
2.どんな資料があるか
2.1 オスカー?ワイルド切抜帖
「図書館情報資源特論」の授業では、ツアーに先立って講義で大学図書館が作成し公開しているデジタルアーカイブの例として、アイルランドの劇作家であるオスカー?ワイルドの「新聞雑誌切抜帖」(Oscar Wilde Scrapbooks/Mason Library)を紹介した。ツアーでは実際に切抜帖を最初に見てもらった。
この切抜帖は、世紀末研究の第一人者のウォルター?ハミルトン(Walter Hamilton, 1844-1899)が始めたイギリス本国でのワイルドに関する新聞?雑誌のスクラップを、書誌研究家のスチュアート?メーソン(Stuart Mason, 1872-1927)が引き継ぎ完成させたもので、英文学者の故?本間久雄が1928-29年の洋行の際に入手したものである。原紙/原誌そのものの切抜のため、掲載当時の雰囲気を十分に味わうことができる。
2.2 ダ?ヴィンチの手稿
イタリアの画家レオナルド?ダ?ヴィンチ(1452-1519)が、約40年間に渡って書き綴ったノートを手稿と称しているが、当館には複製であるが、ほぼ全ての手稿が揃っている。ツアーで紹介したのはパリのフランス学士院に収蔵されている12冊の手稿集を複製した『パリ手稿』である。ダ?ヴィンチの手帳大のノートを当時の状態で復刻したもので、びっしりと書き込まれた文字の中にラフスケッチ画が見られる。
2.3 アルフォンス?ミュシャの挿画本『トリポリの姫君イルゼ』
アール?ヌーヴォーを代表するチェコの画家であるアルフォンス?ミュシャ (1860-1939)の1897年の挿画本で、当館にはフランス語版とチェコ語版がある。元となった1895年の戯曲を小説化したもので、ミュシャが挿画を担当した。当館には『主の祈り』(1899)や、ミュシャが関わった文芸雑誌『ココリコ』のオリジナル全号を製本された状態で所蔵している。
2.4 『The Book of Kells : fine art facsimile volume』(「ケルズの書複製版」)
「ケルズの書」は豪華な装飾が施された4 冊の福音書で、マタイ伝、マルコ伝、ルカ伝、ヨハネ伝が収められている。アイルランドのトリニティ?カレッジ?図書館に約300 年にわたって保管され最高の装飾写本の一つとして知られている。
2.5 プトレマイオスの『宇宙誌』
アレクサンドリアで活躍した数学者、天文数学者、地理学者であるプトレマイオス(ca.83-ca.168)の『宇宙誌』(コスモグラフィア)は、ヴァティカン教皇庁立図書館蔵本複製(岩波書店 1984年)で、市販された図書の中で、高額かつ最重量の本であり、ヨーロッパを中心に当時知られていた地点の緯度と経度を記した書物で、当時の地図が多数収録されている。
2.6 その他 1点物資料
1点物である梶井基次郎や谷崎潤一郎等の原稿も貴重書庫室内で保管している。これらについては、ガラスケースを使った図書館内の展示で定期的に紹介を行っていく。
2023年10月に、谷崎潤一郎の「母を恋ふる記」[1957.6] 草稿を図書館2階ガラスケースで初披露した。「母を恋ふる記」は、大正8年(1919年)1月に東京?大阪の新聞に発表された短編で、谷崎文学の一特性をなす母性思慕の原型をなす作品とされる。当自筆原稿は、新聞用の短編ではなく、舞踊劇の自筆原稿である。