ご卒業おめでとうございます
私の好きな詩人に、工藤直子さんがいます。随分前ですが、工藤さんの講演会に参加したことがありました。工藤さんは、ふわっと明るく温かな雰囲気を漂わせ、周りを包み込むような愛情に満ち溢れた素敵な女性です。しかし、そのような工藤さんでも、こころがとても重く、苦しく、淋しさで眠れぬ夜が続いた時期があったそうです。
お辛い日が続く中、ある時、工藤さんがふとベッドの上でうつ伏せになり、手足を大きく広げてみたところ、まるで地球に抱きしめられているような感覚を覚え、こころが救われたと教えてくださいました。こうして出来上がったのが、「おやすみ」という詩なのだそうです(『のはらうた』くどうなおこ 童話社 1992)。
卒業生の皆さん、今、皆さんはどのような気持ちでお過ごしでしょうか。不安、緊張、希望、期待、歓喜…あるいは、少し切なさを感じているかもしれませんね。どうか、ありのままのご自分を大切にし、その気持ちごと優しく抱きしめてあげてください。大学生活、本当によく頑張りましたね。
この先もし、ちょっとしんどいなと感じることがあったら、工藤さんのように地球を感じてみるのも一つの方法かもしれません。自分の感情に正直でいることは、生きづらさを感じやすい現代社会において、とても尊いことだと思います。それは、あなたが存在している証であり、真実であり、軌跡です。包み込まれる心地よさを存分に感じてみましょう。
皆さんがこれまで学び得た知識や技術、味わった喜怒哀楽のすべては、今後もあなたの糧となり、人生の道標となるでしょう。「答えはきっと自分の中にある」、大丈夫、きっと大丈夫です。
あなたは決して一人ではありません。私たち教員は、これからもずっと、皆さん一人ひとりを見守り、応援しています。嬉しい時も、ちょっぴり苦しい時も、いつでも分かち合えるように心の扉を開いてお待ちしています。
ご卒業、おめでとうございます。またお会いしましょう!
(文責:野尻 美枝)